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岬くんは富士スポーツ医学研究所に戻った。
長居サッカースタジアムでのワールドユース決勝。
彼の活躍で日本は優勝したものの、その代わりに代償を支払う事となってしまった。



岬くんの病室にお見舞いに来た。
ベッドの上に脚を投げ出して座り、壁をぼ~っと眺めている岬くんがいた。
その表情は儚げで、切なくて、見てる方も辛くなる。

「岬くん・・・」

私が声を掛けると、いつもの優しい微笑みを向ける。

「あづみちゃん、来てくれたんだ」

でも、その微笑みが、私には泣き顔のように見えた。
だから・・・

「ねぇ、岬くん、泣きたい時は泣いていいよ」

岬くんの腕を掴み言う。
でも、

「あづみちゃんの方が泣きそうな顔してるよ」

と、切り換えされてしまった。









表彰式後、心配になり裏に周った。
関係者以外立ち入り禁止なので、外から覗き込んだ。

救急車が止まっていた。
岬くんのお父さんが慌てた様子で、ストレッチャーを覗いてる姿が見えた。
岬くん、運ばれてるんだ?

思わず
「岬く~ん」と叫んでしまった。

その声に、岬くんのお父さんがこっちを見る。

お父さんは私を覚えていてくれて、中に入るよう言ってくれた。

もともと色白な岬くんの顔色はさらに蒼白で、
アラバスターを思わせた。


救急車に同乗し、大阪市内の病院へ一緒に行くこととなってしまった。


でも、私がいる間は目を覚まさなかった。









私は、その光景を思い出していた。




「あづみちゃん?」

「だって、だって、岬くんが死んじゃうと思ったんだから・・・。
 真っ白な顔して、目を覚まさなくて・・・」

「そういえば、あづみちゃん、決勝の後、病院に付き添ってくれたんだってね。
 ありがとう」

「だって、だって、あんなにいっぱい血を流して運ばれて・・・。
死んじゃったらどうしようかと・・・」

掴んだ岬くんの腕を揺さぶっていた。

「あづみちゃん、わかったから、手を放して欲しいな」

そう言われた事になんか悲しい気持ちになる。

「ごめん」

手を放すと岬くんの腕の中にいた。

「だって、こうできないでしょ」

岬くんに抱きしめられていた。

「ねぇ、さっきあづみちゃんが言ってくれたこと、そのまま返すよ。
 泣きたい時は泣いてもいいよ」

その岬くんの優しい声のトーンに、堪えていたものが溢れ出す。 

わ~ん・・・。
私は彼の腕の中で泣きじゃくっていた。

「ばか、ばか、岬くんのばかぁ~~」

そういいながら泣き続けていた。

「ごめんね」

大きな手、温かい手のぬくもり。
頭を撫でてくれる。

思いっきり泣いて落ち着いた私は、さっきの儚げな岬くんの顔を思い出した。
顔を上げ、岬くんの顔を見つめる。

「岬くんは大丈夫なの?」

「うん?そうだね」

そう言った彼は、優しく目を細めた顔をしていた。

「だって僕の代わりに泣いてくれる人がいるから」

そう言って岬くんは笑いだしていた。

「なんで、笑うのよぉ。私の顔ひどいことになってるって言いたいんでしょ?」

「いや、そうじゃなくって・・・。確かに化粧落ちてひどい顔かも・・・。
 でも、そうじゃなくて・・・。
 あづみちゃんてさ、こんなに泣き虫だったんだなぁって・・・」

「なによぉ、それ」

「だって、フランスにいた頃ってあまり泣かなかったでしょ」

「う~、岬くんのせいなんだから・・・」

「えっ?」

わたしが泣くのって、岬くんの事考えてる時とか、
岬くんと居てほっとした時とか・・・。
そう、岬くん絡みが多いって気付いちゃった。

「そっか、だったら、泣き場所はここだよ」

そう言って腕の中に包まれてしまった。

「僕のせいで泣くなら、君を守るのも僕の役目かな?
 だから、君の泣き場所はここ」

「うん」

なんか、違う気がするけど・・・。

この腕の中が私の泣き場所かぁ。
でも、それもいいかも。
だって、岬くんの腕の中って温かくて居心地がいいんだもの。

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南葛高校には、今はほとんど使われてない用具室がある。
そこに現れた二人・・・。
岬太郎と新田瞬。


「新田、キミが開けて」

そういって鍵を差し出す岬。

「何でオレが?・・・。嫌です」

「僕だってやだよぉ」

「先輩なんですから、年上なんですから、ここは岬先輩が・・・」

「新田・・・。先輩命令!」

「こういう時だけ先輩命令って・・・。ずるいですよぉ」

「新田だってこういう時だけ先輩扱い?」

「だいたいなんでサッカーの練習に野球ボール使うんですかぁ?」

「サッカーボールをピンポイントで蹴るための練習だって言ってたじゃない?」

「そんなことして本当に上達するんですかねぇ?」

そう、今日の練習、野球のボールを使うと3年の先輩が言い出し、
今はあまり使われてない北校舎倉庫。
そこに眠っている野球のボールを取りに来た2人。

「でも、この中のボールって使えるんですかね?」

「取りあえず空気入れもってことだよ。何個かは使えるのあるんじゃない?」

取りに来たもののなかなかドアを開けようとしない2人・・・。

「新田、スポーツ部の先輩命令って絶対ってところあるよね?はい」

そう言って再び鍵を新田に渡そうとする岬。

「だから、こういう時だけ先輩命令はないです」

「だって、僕、幽霊とか好きじゃない」

「幽霊、好きな人なんていないですよぉ」

そう。この北校舎の倉庫には幽霊がいるらしい。
南葛高校七不思議のひとつ。

そんな訳で2人共ためらい、どちらが開けるかで揉めている。
なぜこの2人になったかというと、
ただ単にじゃんけんで負けた1年と2年というだけの事。




岬先輩ってほんとサッカーやってる時とこういう時って顔が違う。
試合の時、サッカーしてる時は凛々しいのに・・・。
こういう時はオレから見てもかわいくみえる。


「お願いします」

そう言って岬の背中を押す新田。

「わかった。わかったから」

そう言って鍵穴に鍵を差し込む。
かちゃ。鍵が開いた。

「新田・・・。いい開けるよ」

そういってドアノブに手をかける。
そっと、ゆっくりゆっくり引いていく。

ギー。ドアが開く。

「岬、新田なにやってんだ?」

背後から声が掛かる。

「わぁーわぁーわぁー」

悲鳴を上げて抱き合う岬と新田。

声を掛けたのは石崎と浦辺・・・。
彼らは補習で部活への参加が遅れた。

「石崎くん」
「浦辺先輩」

「おどかさないでよぉ」
「おどかさないで下さいよぉ」


二人の声がハモる。




「練習で野球のボールを使うことになって」
「でも、ここ、幽霊が出るって言うし・・・」

「ははん、怖がり」
「そんなの迷信に決まってら」

浦辺と石崎がからかい口調で言う。

「そんなこと言うなら、浦辺先輩か、石崎先輩が行って下さいよ」

「そうだよ」


石崎と浦辺はお互いの顔を見ると、にぃ~と、意地悪そうな笑みを浮かべた。
そして岬の背中を押す。

「えっ、ちょっと・・・」

「よろしく~、み・さ・き・く・ん」


浦辺先輩と石崎先輩は、こういうことに関しては息がピッタリなんだから。
と思いつつ、ターゲットが自分でなくってよかったと思ってる新田だった。

「わかった。わかったから、押さないでよぉ」


何故かこういう役目は岬にまわってくる。

うわあ、ほんとに薄暗い感じがする。
そう思いながら中に入ると、

バタン!

ドアが閉まる。

「石崎くん、浦辺くん、も~、ドア閉めないでよ」
岬は独り言のように呟いた。

対する石崎と浦辺は、
「あれ、岬の奴、ドア閉めちゃった」

「そうだ、出られないように」

そう言ってドアに体重かけて寄り掛かる。

ドアは、石崎達がいたずらで閉めたものでも、中から岬が閉めたものでもない。
勝手に閉まったものだった。


「先輩、いくらなんでもそれまずくないですか?」
あたふたする新田。


岬は、野球のボールが入ったスーパーの籠のような形をした籠をふたつと、
空気入れを手にする。
ひとつの籠の上に空気入れを乗せて、両手にひとつずつ籠を持つ。


こんな所に長居は無用。
急いでドアに向かう。
ドアを目の前にしたその時、黒い影を見た気がした。

あれ、今のなに?
後ろを振り返る。


気のせい?

うん、気のせい気のせい。怖いと思うからダメなんだ。
早くここから出よう。

ドアのほうに向き直った瞬間、その黒い影が岬の中に入り込んだ。



『**~・・・、どこにいるの?会いたいよぉ。』
岬の口から、彼とは別の女性の声がそう言った。
その声はとても切なげだった。

岬の瞳から涙が零れ出した。





「そろそろ勘弁してやるか」
「そうだな」

石崎と浦辺はドアに預けていた体重を自分の体に引き取った。



「あれ?岬の奴出てこないなぁ?」

「開かなかったもんだから、様子見か?」

二人は、中から押される感覚を確かに感じていた。
でも、岬は中に入ってから一度もドアに触れてはいない。

「こっちから開けたほうがいいですよぉ」


「岬、ごめん」

石崎がドアを開けながら言う。

「わりぃ、岬」

浦辺も声を掛ける。

二人は、
『も~、石崎くんも浦辺くんもひどいよぉ』と拗ねた岬の言葉が返ってくるとばかり思っていた。

くすん、ひっく・・・。

でも、聞こえてきたのは、泣き声だった。
開けたドアの前に佇み、泣いている岬の姿があった。

「え、ちょっと、岬?」

動こうとしない岬の腕を石崎と浦辺が引っ張る。
ボールの入った籠と空気入れを新田が持つ。

「まったく、石崎先輩も、浦辺先輩もやりすぎですよ」

「いやあ、まさか泣かれると思わなかったから・・・」

「ごめんな、岬」

二人が、岬を宥め謝るものの、それには応えず泣き続ける。

「いい加減、機嫌直してくれよ」




「おーい」

森崎が向うから走ってきた。

「あまり遅いから、見てこいって先輩が・・・。石崎と浦辺も一緒だったんだ?」


泣いてる岬と、宥めている二人の姿を見た森崎が、いぶかしげな表情を浮かべる。

「で、何かあったの?」


「いやあ・・・」
「ちょっと、ねぇ・・・」

「石崎先輩も、浦辺先輩もひどいんですよ」

「新田」

そう言う新田を、二人が制した。

森崎の首から十字架のペンダントが覗いた。
太陽の光を受けて反射する。

その光を、十字架を岬の視界が捕らえた。



『なんだぁ、あの黒いの?ただの影だよね?』
新田の目が黒い影を捉えたものの、ただの影を勘違いしたということで納得してしまった。



「あれ?僕・・・」
正気に戻った顔の岬。

「岬、大丈夫か?」

「あれ?なんでここにいるの?」

岬は自分の頬が、瞳が濡れていることに気付いた。
手で頬と目に触れてみる。

「あれ?僕、なんで泣いてるの?」

「なんで?って、だから悪かったてばぁ」

「泣くほど怖がるなんて思ってなかったんだよ」

「???」

何があったか理解できていない岬。

「石崎先輩と、浦辺先輩が用具倉庫に閉じ込めたんですよ」

「そうだったんだ?でも、ぼく、それくらいで泣かないと思うんだけどなぁ?
 う~ん・・・、 覚えてないんだよね・・・」

「おい、まじかよ」

「中に入って、籠を手にして出ようと入り口に向かって、気付いたら、ここに居た。
森崎くんがいつきたのかもわからないし・・・」

そう言いながら涙を拭う岬。

「とりあえず、顔洗ってこいよ」

森崎が心配そうな顔をして言う。

「うん。そうだね」

岬は水道場へ向かった。


「あいつ大丈夫かな?」

「人間ってさ、恐怖の記憶忘れるって言うよね?
 例えば事故にあった人が事故当時の記憶なくしてたりとか・・・」

「ほんとか、森崎?」
「あいつ、それだけ怖かったってことか?」

「う~ん、どうなんだろ?」

「でも、岬ってそんな風には見えないよな?」
一応、責任は感じている浦辺と石崎。

「ま、まあ、あいつなら大丈夫だろう。うん」
と、自分たちを納得させる二人なのであった。







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あとがき

幽霊が出てくる話です。オカルト物?です。

私は今でこそめっちゃ怖がりですが、というか昔から怖がりではありました。
お化け屋敷とか昔から入れないです。

そのくせ、ハロウィン世代なものですから、幽霊とかには興味があり、
幽霊スポット、行ってみたいと思っていたりしました。
ただ、家にハロウィンあると怖いので、友達から借りて読んでました。
そして、霊感が強くて、自分が霊能者で浄霊だとか除霊してる妄想とかをしていました。
そんな訳で、こういう作品を書いて見たくなりました。



しばらく続きます。
いちお最後は浮かんでいるのですが、全然まとまらなくて、ほうっておいたものです。

岬くんと新田くんのやり取りが書きたくて、書いたものです。
この二人のやり取り、書いた本人、気に入っております。
なのでずっと埋もれさせておくのももったいないと思いまして、
とりあえず書いてあったところまでを、UPしてみました。

最後までたどり着くでしょうか?

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