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ここから 3-② ~陽だまりの中で~ 

彼の部屋のドアをノックする。
反応がない。
おかしいなぁ、部屋にいるって言っていたのに・・・。
おそるおそるドアを開ける。 
覗き込むとベッドに横になってる岬くんがいた。

寝てる。


掛け布団からはみ出て脚が覗いている。
パジャマのズボンの裾が少し捲れ上がり、
包帯が巻かれているのが目に飛び込んで来た。
あれ、こっちって右脚よね? 左脚のパジャマの裾を捲ってみる。

両脚痛めた訳なのね。
彼の脚をそっと撫でる。
へぇ、珍しい。これでも起きないなんて・・・。
そっと布団を掛け直す。

寝顔を覗き込む。
ほんとに穏やかな顔してる。
昨日の厳しい顔とは大違い。

額に手を当ててみる。少し熱いかも。
熱が下がり切ってないみたい。

おでことおでこをくっつける。熱計るため。そう言い訳をして・・・。

そして『起きないでね』と願いながら唇を重ね合わす。
顔を放していく・・・。

その時視線がぶっかった。
うわ~、なんでこのタイミングで起きるのよ~。

気付いてませんように。と言う思いは届かなかった。

「こういうことは起きてる時にしてくれるとうれしいんだけど・・・」

これが起きた彼の一声になった。

「こういうことってどういういことよぉ~」

慌てふためく私。顔が赤くなっていくのがわかる。
岬くんはそんな私を見ている。なんかじっと見てる。

「ねえ、あづみちゃん、大学は?」

あっと、気になったのはそっちなのね。
私の慌ててる様子じゃなくって・・・。
いつもなら、こんな私見てからかってくるはずなのになぁ?・・・。


「えっと、今日は休講なの」

大学が休みなのは本当で、今日はちょっとゆっくり寝て、
また夕方バイトに行く予定だったんだよね。

「そっか・・・。ところで、昨日どこで夜明かししたの?帰ってないんでしょ?」

「・・・」

「こんな時間にお見舞いに来るし、それに・・・、昨日と同じ服だから・・・」

「駅前のネットカフェ」

「そっか、それならよかった」

「えっ?」

「この辺ぶらぶらして外で夜明かししてたら・・・。
 なんて考えちゃったんだよね」

とても心配そうに言う。

でも私はいつもの調子で・・・。

「なんで私の心配ばかりしてるのよ。人の心配してる場合じゃないでしょ。
 もっと自分のこと心配しなさいよ」

と言ってしまった。 

照れ隠しプラス、昨日あんなことしたのに心配されてるのが申し訳なくって、
トゲトゲしい言い方になってしまった。


岬くんは、いつもだったらひるまずにかわしてくれる。
でも黙り込んでしまった。
理不尽な怒りに戸惑い傷付いた表情を浮かべていた。

いつものにっこり笑顔で、
「照れちゃって、かわいい」なんて、からかってきてよ。

こんなこと考える私はやっぱりずるいね。

「あの・・・、岬くん・・・、えっとね・・・」

「昨日はごめんなさい」と言いたかったのに、なかなか言えない。

「ねえ、あづみちゃん。昨日の事まだ怒っているの?」

昨日の事に対する口火を切ったのは岬くんのほうだった。

「えっと・・・」

怒ってるの?ってそう思われてしまったのね・・・。

「それとも、連絡しなかったこと怒ってるのかな?」

「連絡できなかったんでしょ?
 後藤さんに聞いた。倒れるまでって何やってるのよ・・・。
 あ、ごめん・・・」

ふう~、岬くんの溜息が聞こえた。

「それに、あんなことしたから、連絡なくても仕方ないと思っていた。
 わたしね怒ったんじゃなくて逃げたの。 
 岬くんには逃げてるだけなんて偉そうに言ったくせに・・・。ひどいよね」

「あづみちゃん・・・」

「ごめんなさい。私、岬くんに心配してもらう資格ない」
岬くんが何か言おうとしたのわかったけど、一気にまくし立ててしまった。

「でも、戻ってきてくれた。ちゃんと戻ってきてくれたでしょ」

「だって・・・」
 
「昨日帰らなかったのは、それでなんだね」

こくりと頷く私。

「昨日のことは怒ってないし、悪かったのは僕。
 ごめん。 八つ当たりしてしまった。
 せっかくきてくれたのに、追い返すまねしたのは僕の方。
 だから昨日のことはもう気にしないで」

そう言いながら上半身を起こす。
とっさに手を出し背中と肩を支える。
脚は掛け布団の中に入ったまま。

「でもね、心配してもらう資格がないってどういうこと?」

「起きて大丈夫なの?」

とはっきり言えたかどうか・・・。
彼の厳しい顔、厳しい言い方に怯んでしまった。

「だって私・・・。優しくないなぁって・・・。 
 傍にいる資格もないんじゃないかって」

ふう~、と彼はひとつ大きく息を吐き出した。

「なんでそう思うのかな?」
 
「だって、あんなきつい言い方して、傷つけてばかりいるような・・・。
 私、もっと優しくなりたい」


「僕が『傍にいて欲しくない』って言ったことある?
 僕ってそんな弱々しく見える?」

だめだ。泣きそう。
泣き虫は嫌いって思ってたのに、岬くんといると何故か泣き虫になっちゃう。

首を横に振るのが精一杯だった。

「それに心配するのは僕の勝手でしょ。好きな人なんだもん。心配するよ」

涙がこぼれないように、奥歯をかみ締めぎゅっと目をつぶる。

「怒ってごめん。お願いだから、そんな顔しないで」

そういった彼はいつもの優しい顔に戻っていた。

「ねえ、なにも、言い方がきついからって、優しくないってことではないと思うんだけどな。 
 あづみちゃんは僕の事思って言ってくれてるんでしょ? 
 きつい言い方しても、僕の事心配してくれてるのちゃんと伝わってるよ。
 そうでしょ?」

そうか。そうなんだ。
後藤さんに言われた『彼を信じてあげなさい』って言葉が脳裏を掠めた。

しばらく何も答えない私に、
岬くんはとても悲しげな顔をしてるように見えた。

その顔が昨日の泣き顔とだぶる。
彼を抱き締める。

「あづみちゃん?」

「昨日の続き。なんて、私のわがままだね」

「僕は、もう大丈夫だよ。もう逃げたりしないから」

「でもこうしていたいの」

「うん」

「私、もうあんなこと言わない」

「うん」

「私、岬くんの傍にいる。だって昨日みたいに暴走されたらこまるもの」

「うん」

「このまま傍にいてもいい?」

「うん。もちろんだよ。僕も傍にいたいし、いてほしい」

「よかった」

「うん。よかった」

そういって顔をあげた岬くんは、ほっとした顔で微笑んでいた。

「実はね、僕も、ほんというとあづみちゃんとおなじようなこと考えてた。
 ごめん・・・。
自分の姿とダブっちゃったんだよね。だから、さっき怒っちゃったんだと思う」

「・・・」

「あづみちゃんから連絡ないし、もう来てくれないんじゃないかって・・・。 
 東京行かないとだめかなって・・・。」

そうなんだ。一緒の思いしていたんだね。

「今日きてくれたあづみちゃんの姿みて、どれだけ嬉しかったか分かる?」

そう言って私の胸に顔を埋めてきた。

彼の髪をそっと撫でる。

「あったかい・・・。ほっとする・・・。まるで陽だまりみたいだ」

「んー?陽だまり?」

「うん。ほら、冬の寒い日に陽だまりみつけるとほっとするでしょ?
 あづみちゃんのぬくもりは陽だまりのぬくもりだなぁって」

そっか、陽だまりか・・・。なんかうれしい。


しゃくりあげる彼の息遣いが聞こえてきた。
わたしの泣きたい思いはいつの間にか消えていた。

泣きじゃくる岬くん。

抱きしめてる腕に少し力が入ってしまった。
先ほどよりもぎゅっと彼を抱きしめる。

「違うから。昨日とは違うから」

「うん」

「こんなに泣けてくるのはきっと熱のせいだよ」

「うん」

ごめんね。不安だったんだね。

「あづみちゃんがもっと優しくなりたいなら、僕はもっと強くなりたい」

泣きじゃくりながら、そう語る岬くん。

そんな岬くんがとても愛しく感じてしまった。





「ごめん。ほっとしたら・・・」

そう言って、涙の乾ききっていない濡れた瞳のまま照れて微笑む岬くん。
そんな岬くんがかわいくって・・・。

うふふ・・・。くすくすくす・・・。

笑いが止まらなくなってしまった。

「あづみちゃん?」

「だって、かわいいんだもん」

「かわいいって・・・。
 あづみちゃん『男のクセにかわいい人は嫌』とか言ってたじゃないの」

あーら、覚えていたのね。
でもそれも会ったばかりの頃の話。
そんな昔の話。
確かに昔はそう思っていて・・・。
でも・・・。

「いいの。だって、岬くんは特別なんだもん」

窓から太陽の光が差し込み、陽だまりを作っていた。
その柔らかな陽の光は、これからの行く先を示してる気がした。



ここから、そう、ここからがスタート。
ここからが、これからに向けての始まり。

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