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以心伝心 

 ~ほっぷほっぷ なお 様より〜




井沢が泣いた。
ボクよりも少しだけ背の高い井沢が、ボクの肩によりかかる。
声もあげず、静かに、流れてくる涙をとめようとしない。
ねぇ、どうしたの? 何があった? こんなになるまで、何を溜め込んでいたのさ・・・。
井沢の体温が少しずつボクの体温となる。
何も言えない。 何も聞かない。
時間だけが静かに流れて、ボクは井沢の頭に手をやりゆっくりとなでた。



・・・・・!
「夢か・・・・」
いやな夢だったな、と暗い中、時間を確かめると午前3時を少し回ったころだった。
ベットの上に座り、軽く深呼吸をする。
井沢、泣いていたな、何かあったのかな、大丈夫かな・・・と、思い小さく頭を振る。
軽く深呼吸・・・じゃない、今度はため息。大丈夫かなは、ボクの方だ、きっと。
昼間の出来事が、思っているよりもボクの中で気がかりになっているんだ。
だから、井沢に重ねてこんな夢を見たに違いない。そう思った。

今日(というか昨日になるけど)、若手の後輩選手のオーバーワーク気味を注意した。
彼は、先日の試合で脛を削られて、捻挫をした。
それでも、いつも通りの練習をこなそうとする彼に、あまり無理をしない方がいいと注意をした。
すると、「だいじょうぶっすよ!ピンピンですから!こんなの怪我のうちに入りません!」と返ってきた。
いつもなら、穏やかに「そうじゃないよ」と諭すところ。なのに、今日のボクは、むっとして彼を怒ってしまった。
怪我の怖さ、その先に見えてくるもの。それがまるで分かっていない、と。かなり強い口調だったと思う。
正論を言ったまでだけど、あの言い方、大人げなかったよなぁ・・・。
“岬はね、もっと言いたいことを言っていいんだよ。いつまでも、誰にでも好かれる岬くんでいる必要ないって。
疲れるだろ?“
以前に井沢が言ってくれたことを思い出す。
言いたいこと言って、くよくよしているようじゃ、まだまだだよね。
 明らかに面白くない顔をした後輩が頭から離れていかないんだ。
明日(もう今日だけど)、ケロっとした顔をしてくれているといいなぁ。
ほら、まだた。こんなこと、あいつを気遣うようなこと、考えなくていいんだって。
間違ったことは言ってないんだから。

と、同時にむっとした自分も思い出す。
いつもなら、流せるところ。いつもなら、他人は他人と割り切ってしまうところ。
なのに、思わず踏み込んでいったのは、きっと、羨ましかったんだ。
怪我の怖さをまだ知らない彼が。 まっさらな素地でいる彼が眩しく思えたからだ。
そっと、左脚の膝をさすった。
彼に注意をする前に少しだけ感じた違和感。 
走っていただけなのに。
冷や汗が出た。
まさか・・・・?
直感的に芝崎先生の顔が浮かんだ。
怯えてる・・・。
結局、ボクのしたことは八つ当たりだ。
自分にこれから降りかかるかもしれない現実に怯え、消化できなくて、後輩をはけ口にしただけ。
当たる場所を探していただけ。
 
現実は受け止めるしかないのに。
もう一度、膝をさする。 大丈夫。 一瞬だけだったんだから。 自分に言い聞かせた。
不安よ、湧き上がるな。 不安だけを見るな。
受け止めるしかないんだ。

暗い部屋が、ボクの心を一層、マイナス思考にさせていた。


時計を見ると4時になろうとしていた。
眠れなくなってきたぞ・・・どうしよう。
ふと、井沢にメールしてみようかな、と思った。
十中八九、眠っている。受信音で起こしちゃうかな。
いや、地震があったって、起きないような井沢だから大丈夫か。
少しだけ、少しだけ違うことを考えれば、気分も変わるだろう。
このマイナス思考を打破するには、これしか思い当たらなくて、
申し訳ないね・・・と呟きながら、携帯を持つ。
“キミが泣いている夢を見たよ。近頃、どう?変わったことない?”
白々しいな・・・と苦笑いをしながら、送信。

と、すぐ電話がかかってきた。
「もしもし?」
『岬?どうした?』
「なに?キミこそ、どうしたの?」
『お前からこんな時間にメールがきたからさ、気になったんだよ。何があった?』
「キミこそ、なんで起きてんだよ?起こしちゃった?」

ボクたちは、それぞれの理由を言い、笑いあった。
井沢は、ボクが泣いている夢を見て、目が覚めたと。
ボクは、井沢が泣いている夢を見て、目がさめたと。
井沢は、昼間、先輩と口論になり、言い過ぎたと、気にしている。
ボクは、昼間、後輩に余計なことを言ったのでは・・・?と、気にしている。

それぞれが、自分の心が相手となって夢に出てきていると思ったと。
『お前、言い過ぎたんじゃないかってくよくよ泣いていたんだろ』
「キミさぁ、先輩に明日から嫌がらせでもされるんじゃないかってビクビク泣いてたんじゃない?」
『ばぁ~か、プロになって何年だと思ってんだよ。先輩に譲れないものくらい出来てんの!』
「ボクだって、憎まれ役をかって出るくらいするんだからね」

部屋の電気も点けずにする電話。 部屋に響くのは、キミの声とボクの声。
キミの声がボクの心に染み渡る。
たまには、こういうのもいいね。
耳だけに集中している神経がボクの心を軽くした。

『岬?』 
「ん?」
『芝崎先生のところには行っておけよ』
「うん。分かってる」

大丈夫。 どんな結果であろうと、受け止められる。
怯えていたボクは、あれ? どこに行ったんだろう。

その日にあったことを口に出来ること、聞いてもらうこと、言ってもらうこと、聞いてあげられること。
簡単なようで難しいのに。

ボクにはキミがいるんだね。

『さて、なんだか安心したな。眠れそうだよ。お互い、あと2時間ちょいってとこだけど寝ておいた方がいいよな』
「うん。ボクも電話を切った途端、眠れそうな気がしてきた」
『じゃ』
「じゃぁね」



目が覚めた。
よく寝たなぁ・・・。あれ?昨晩(ってさっきなんだけど)、ボク、井沢と話しをしたよ・・・な・・・
夢を見て、眠れなくなっちゃって・・・あれ? どこまでが夢だったんだっけ・・・?

携帯電話の受信フォルダにメールが2つ。
ひとつは、後輩から。
“昨日は、すみませんでした。岬さんが言ってくれたことを何度も繰り返し考えました。
先輩の忠告を素直に聞けない自分にも反省をしました。これからは岬さんが思ったことを何でも言ってください。
よろしくお願いします”

もうひとつは、井沢。
“おはよっす。あのさぁ~、オレ、昨晩(っていうかさっき)、お前と電話したよな?夢じゃないよな?
夢見て、目が覚めて、眠れなくなって、お前と電話して・・・  ???
どっからどこまでが夢だったんだか、分からなくなっちまったよぉ~~”


清々しい気分で、カーテンを開ける。
朝日がまぶしい。

おかしいね。 ボクたちは同じ夢を見てたってこと?
一度ではなくて二度?
ふふっ。 
自然に笑いがこみ上げてきた。


さぁ、今日もがんばろう!!



              
「ほっぷほっぷ」 なお 様より頂きました。私の見た井沢くんが泣きじゃくる夢「何があったのだろう?」 (お知らせ&作品関連話)参照。 この夢からお話考えて下さいました。 私のお願いに答えて素敵な作品贈って下さいました。感謝です。 


                        
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