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消えゆく雪

岬くんinふらの
『雪明かり』の続き


とうとう、ふらのは雪に埋もれた。
毎日雪かきしないと練習ができない。
今日も練習するための雪かきから始まる。
当然のことながら岬は雪かきなんて初体験。

「岬、なんか楽しそうにやってるなぁ」
金田、小田チームメートが声を掛ける。
「うん。はじめてのことって何でも楽しいんだもん」
無邪気というかなんというか・・・。
「楽しいかぁ。でもこれが毎日毎シーズン続くんだよ。いい加減うんざりだよ」
「グラウンドだけでなく家でもしないといけないんだよ」
「そうそう。さぼると家から出られない」
「父ちゃんも母ちゃんも、雪かき面倒くさいって、俺にやらせるんだ」
「うちもだよ」
うんうんと頷くみんな。

「そっか。ごめん。楽しいなんて言ってられないんだね」
一瞬悲しそうな顔をして空を見る。
やっぱり他所から来た自分には分からないことばっかりみたい。
なんて考えてるみたいだ。そんなこと考えるなよ。
「岬・・・」
でも、すぐいつもの笑顔に戻った。
おれが心配し過ぎてるだけか・・・。
「ねえ、でも雪かきってトレーニングになるじゃない?」
「トレーニングかぁ・・・」
「うん。足腰に力入れないとダメでしょ。だから足腰強くなりそう」
「それ母ちゃんにも言われた。
雪かきさせるために適当なこと言ってるのかと思ったけど・・・」
「でも岬の言う通りかも」
「うん。きっと踏ん張り効くようになるよ。サッカーのためって思えば」
「うん。楽しいかも」
そう言うとみんな楽しそうに雪かきしてる。
やっぱ岬ってすごいわ。
おれだったら「文句言わずにやる」っていうところだ。





「岬も雪の上での練習慣れたみたいだな」
「うん。でも雪の上だと走るのも大変だし、
 ジャンプする時も踏ん張り利かなくて大変なんだね」
「始めての雪での練習。お前、転びまくってたもんなぁ。
 ジャンプも飛べてなかったし」
「あは。だってあんなに滑るとは思わなくって・・・」
ちょっぴり照れたように言う岬。

あんなにうまい岬が、雪の初練習かなり戸惑って、
転びまくってこっちがびっくりした。
でもさらにびっくりしたのは、その戸惑いはほんとに最初だけだった。
雪の練習に慣れるのに、そんなに時間は必要なかった。
もともと足腰強いみたいで、すぐに慣れた。
やっぱすごいやつだ。

岬が転校してきて1ヵ月余り・・・。
こいつと一緒なら全国大会出場も夢じゃない。
今までは漠然としか考えなかったけど、でも現実的に思えてきた。




「岬、一緒に全国大会行こうな」
とある日の練習の時にそう声を掛けてみた。
「そうだよ。岬がいればきっと行ける」
「俺たち、前よりうまくなったでしょ?」
「岬が教えてくれたから・・・」
部員のみんなも賛同する。

「全国大会かぁ」
岬は何かを考えてるように言った。
「あ~その言い方。このメンバーじゃ無理だって顔してるな」
「そうじゃなくって・・・」
「そりゃあさ、簡単じゃないことはおれも分かってる。
 でもお前と練習するうちに現実的に全国見えてきた気がするんだ」
「そうそう俺たちがお前のレベルについていければ、夢じゃないよね?」

「そうだね。ふらののみんなならきっと行けるよ」
そういって微笑む岬。
でもその笑顔は寂しげに見えた。





何日かたったある日の練習が終わった帰り道。
おれと岬は同じ方向。2人で並んで歩いてる。
「岬って雪の精みたいだ。」
ずっとそう感じていた。
雪明りを見つめる綺麗な岬を見たからかもしれない。
「えっ?」
「なんか雪に似てるって言うか・・・。
儚げで、でも強さも持っていて・・・。
それに雪の中って意外と温かいんだよ」
「松山・・・」
そう呟いた岬は寂しそうな、泣き出しそうな顔をしていた。
「雪って春が来ると溶けて消えちゃうよね・・・。」
悲しそうに言う岬。
なぜそんな悲しそうな顔するんだ?








帰り道、松山くんに言われた言葉。
~岬って雪の精みたいだ~
雪の精かぁ・・・。
松山くん、
僕は雪と同じように、春が来たら、もうここにはいないんだよ。
いや、雪が溶ける前にもういないかな・・・。

ふらのでのみんなとの楽しい日々。
この日々が永遠に続けばいいのに。
こんなこと考えるの初めてかも。

みんな・・・。
ここのみんなは僕のこと忘れないでいてくれる。
そんな気がする。

それは嬉しいけど辛い・・・。
雪が溶けるように僕たちの思いも溶けて消えてしまえばいいのに・・・。





「岬~」
通学途中の朝、僕の姿を見つけた松山くんが走ってくる。
「おはよう」
「なあ、岬、お前怒ってるのか?」
「え、なんで?」
「オレが雪の精なんて言ったから・・・」
「ううん。怒ってるわけじゃないんだ。ただ、ただね・・・」
いつまでもここにいられないっていう現実思い出しちゃったから・・・。
こんなこと言えないよぉ。
「雪が溶けて消えるってどういうことだ?そういったお前すごく悲しそうだった」
「・・・」
今の僕泣き出しそう。
「松山くん・・・。僕ね春がきたらここにはいないんだ」
「また引っ越すのか?それでそんな悲しそうな顔してるのか」

これ以上ここにいたくない。
本当に別れられなくなりそう。

「雪と同じように、僕がここにいたってことも消えちゃえばいいのに」
涙とともにこぼれた言葉。
そう言う僕を見て悲しそうな顔する松山くん。
「あ、ごめん」
こんな考え悲しいよね。

向かい合った状態で僕の両腕を掴んでくる。
「岬・・・。おれはお前との思い出消えるのはいやだ」
「うんうん」
僕だってほんとはいやだ。消えてなくなるのはいやだ。

「でもね。また会おう。って言ってくれた友達でもきっと僕のこと忘れちゃうんだ。
 ほんのちょっとだけいた転校生なんて覚えてないよね。
 でもそれは無理もないことだよね。
 僕だって1年生や2年生のころ会った子たち忘れてるもの」

それでいいって思ってた。どうせまた会うことなんてないのだから。
でもでも、ここのみんなは違うんだ。

「おれのことも、おれ達のことも忘れるか?」
切なそうな顔で聞いてくる松山くん。
「忘れないよ。忘れられないよ。だって、ここのみんな温かいんだもん」

「また会おう。約束だ。絶対また会おう。」
「約束はしたくない。だってだって・・・。守れない約束はしたくない」

今まで、「また会おう」ってうわべだけ約束して、
それで何人の人たちと別れてきたんだろう?
その約束が叶わないものだっていうのも僕は知っている。

「いや、おれたちサッカー部は絶対全国大会に出場する。
 岬と一緒に同じチームでいくことはできないみたいだけど、
 でも、岬ががいなくても出場してみせる。だからお前も・・・。
 その時お前どこにいるか分からないけど、でもお前も出て来い。
 別のチームだけど一緒に全国大会行こう。
 そうすれば会える。全国大会で会おう。な。約束だ」
「松山・・・」
僕は松山くんに縋って泣いていた。

「うん。約束」
自分から約束なんていったのっていつ以来だろう?
ここにいたい。本当は転校したくない。
そう叫びそうになる。
でもそれは無理なこと、言ったら松山くんが困る。だから言えない。






それからしばらくして岬は転校して行った。
雪とともにやってきて、春とともに去っていった少年。
いつかまた絶対会える。
信じていれば会えるよな岬。
約束したもんな。

そしてこの約束は6年生の夏全国大会で叶うこととなる。

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