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夢みていよう

GC月間なので、やっぱりここはひとつ・・・。
滑り込みセーフ。
小学生のころ、南葛にいたころ、お互いの夢を話し合った。


翼くんの夢はW杯で日本を優勝させること。
僕の夢はオリンピックで金メダルを取ること。

思えば、僕はあの頃から、現実的な子どもだったのかも知れない。

あの頃の日本サッカーは、W杯に出場したこともなくって、
優勝よりも、まず出場が夢と言うか、目標といった感じだった。

でも、オリンピックは、メキシコで、銅メダル獲得。
あとは、金メダル。そう思っていた。

それに、オリンピックのメダルは選手一人にひとつ。
でも、W杯のトロフィーは、優勝国にひとつ。

金メダルを、父さんの首に掛けてあげる。
いつも、仕事をしながら家事をしてくれていた感謝の気持ちを表すには、
それが一番だと思っていた。


でも、翼くんは、素朴なのか純粋なのか、本当に大きな夢を見ていたんだなぁ・・・。
ただ、ただサッカーが好きで、天真爛漫にその頂点に立つのは、W杯の優勝って考えていて・・・。
だからこそ、大きな夢に向かって突っ走っていける。そう思っていた。



「俺の夢は、W杯でサッカーで日本を優勝させること」
そう僕に言う翼くんに、

「うん。翼くんなら叶えられるよ」
と、返すと

「なんで、他人事みたいに言うんだよ」
と、一瞬だけ淋しそうな顔を浮かべ、でも、直ぐに無邪気な笑顔を浮かべて、

「岬くんも一緒だよ」と言ってきた。

「俺の夢はサッカーW杯で日本を優勝させること」

うん、聞いた。

「岬くんと一緒に優勝すること」

「えっ、僕と・・・」

「俺、岬くんとなら、世界に勝てると思っている。
 俺たち2人ならさ、きっと、いや、絶対無敵なんだから」

屈託のない笑顔で、そう言われちゃうと、
ついついそうなのかな?という気持ちになる。

「岬くんの、オリンピックで金メダルの夢と、両方とも叶えようよ。ねっ、約束だよ」

翼くんの勢いに押され、

「うん。約束」

と答えてしまった。



そう、あの日から翼くんの夢は僕の夢で、僕の夢は翼くんの夢になった。
















そして、あの日からおよそ10年後。

僕たち日本代表は、オリンピックの切符を手に入れた。
アジア予選、薄氷を踏む思いで手に入れた切符。

アジア予選では、僕たち2人のプレーは見せることは出来なかったけど、
オリンピック本戦では、世界を相手に、僕たちのプレーを十分発揮したと思う。
だからこそ今、金メダルを争える、決勝戦を迎えているわけで・・・。


前半を終って1対1。
終了間際のロスタイムに追いつかれてしまった。


一試合目から、どの国もそうだけど、僕の左脚を狙ってきた。
僕が左脚を怪我してリハビリして復帰したことは、当然、知れ渡っていて・・・。
そこを狙うのはセオリー、けして間違ってはいないこと。
でも、それが元で脚に違和感を感じてしまった。

この試合までに何度もぶつかり合い、削られもした。

その違和感に気を取られ、走り出すのが遅れた。

いつもなら、翼くんからのどんぴしゃのタイミングのパスなのに・・・。
それを相手に拾われ、そこからゴールに結び付けられてしまった。



「岬くん、どうしたんだよ?」

ロッカールームに戻る際、翼くんに捕まった。
さっきのプレーについて言ってきた。

「いつもの岬くんなら普通に追いつけてるよね?」

「ごめん。翼くん・・・」

「脚が痛むの?」

今まで、息がぴったりで、こういうミスは珍しい。何かあったと思われるのが普通だよね?

「俺も、よく怪我抱えたままプレーしてるから・・・」
「心配してくれてありがと。でも大丈夫だから・・・」

僕は、言葉を遮るように言った。

そのまま、2人並んでロッカールームに戻る。

きっと大丈夫だよね?
このまま無理したら再起不能、引退という言葉が頭をよぎる。
でも、ここまで来て・・・。
最後までプレーしても、大丈夫。
そう自分に言い聞かせる。

ロッカールームに戻り椅子に腰掛けると、違和感だけでなく痛みまで襲ってきた。


「くそっ、あいつら、わざと・・・」

「ああ、怪我した岬の脚、狙ってきてるな」

小次郎と松山は相変わらず熱い。

その2人の宥め役は三杉くんだ。

「でも、それは間違いじゃないよ。勝負の世界では弱い部分を狙われるのは当然の事だよ」

そして、それをフォローするのは翼くんで、

「そうだよ。その分みんなが、フリーになれる。
 日向くん、三杉くん、松山、みんなで攻撃フォローしてくれれば・・・」


「みんなありがとう。でも、僕もやれるから・・・」
そう言って僕は席を立った。

監督に呼ばれたからだ。


監督も気付いていて、医務室で手当てしてもらうよう手配してくれていた。

後半は、痛み止めを打って出場した。

医務室で治療している時は、無理したら引退。
どうしてもこの言葉が頭から追い出せなかった。



でも、試合が始まりフィールドに立つとそんな不安は消えていた。
というか、考えている余裕がなかったんだと思う。
金メダルに向けて全力でプレーした。


周りは僕に負担を掛けないように、考えてくれていた。

攻撃の中心は、翼くんと三杉くん。
2人でゲームを組み立てる。

そして、ゴールを狙うのは、若島津と小次郎。
時折、松山と井沢が攻撃に顔を出す。

僕は、囮として動いている。

守りはキーパーの若林くんを中心に、早田、井川、次藤がよく守ってくれている。

後半戦も、中盤に差し掛かる。
そろそろ点が欲しい。


「岬は、延長やPKまで持たないだろうから、この45分で決めろ」
どうやら、これが後半の一番の作戦。


だったら僕も、最後まで全力で行くしかない。
そして、そんな僕のプレーを見て、翼くんも手を抜いてはくれない。




僕が囮だと気付き始めた相手選手のマークが、ボールを持っている翼くんに向かいかけた。


一瞬、翼くんと僕の目が合う。
僕が走り出した場所にどんぴしゃで翼くんのパスが来る。

さっき、脚の違和感に気を取られ、追いつけなかったのに、
脚の事を気に掛けてくれたのに、
まるでそんなことなかったかのように、いつもの強くて速いパス。

全力プレーには全力プレーで応える。
こんなところが翼くんなんだろうな。
小学生大会の、明和の決勝の時のように・・・。

翼くんは、ついていたマークを交わして走る。
翼くんに向かいかけた、相手選手が僕のほうに戻ろうとしている。
僕はダイレクトで、翼くんにパスを返す。
それをダイレクトで翼くんがまた返してくる。

僕はもう一度パスを出す。

僕と翼くんの間には、相手チームの選手が・・・。

当然、それは僕たちも読んでいるわけで、
少し高めのボール。

翼くんは、あえて飛びつかない。

このパスは、翼くんの少し向こうにいる三杉くんへのもの。

三杉くんはジャンピングボレーで、ゴール前へ・・・。
そのボールを若島津がヘッドで落とし、小次郎がシュート。



残念ながらシュートは弾かれてしまった。

そのボールは浮き玉となった。

これだ。

「岬くん」

「うん。翼くん」

僕たち2人は、そのボールに向かってオーバーヘッドに行く。

翼くんの右脚と、僕の左脚が同時にシュートを放つ。

オーバーヘッドツインシュート。
相手のゴールへ突き刺さった。


よし、勝ち越した。

『2人のプレーは無敵』なんて翼くんが言ってたけど、
 本当にそうなのかもしれないね。


でも、左脚の感覚は少しずつおかしくなってきていた。
その為、松山とポジションチェンジ、守りに回ることになった。










むこうも点が欲しいわけで、相手国の猛攻が続いていた。


まずい、このままだと、向こうのリズムになる。

パスカットから僕はそのまま攻撃に参加することに決めた。

「松山」

彼にパスを出し、そのまま走る。
彼は僕の意図を理解してくれた。


翼くんも、当然のように僕と同じく、攻撃のしどころと考えていた。

「行こう。岬くん」

彼の声が聞こえた。


松山から数本のパスをはさみ、ボールは翼くんと僕のもとへ。

僕達2人は、ゴールへむかって、ツインシュートを打ち込む。

ボールはゴールへ向かって飛んでいく。

しかし、直前でカーブを描いた。
これはシュートではなく、小次郎へのパス。


Jrユースフランス大会の決勝、ドイツ戦で小次郎とタケシが見せた、
力の差でカーブがかかるあの技(?)を真似させてもらった。

僕の方が少し力を加減して放った。

そのパスを小次郎が決めた。

3-1

2点差になった。



残り時間、必死に、この2点を守りきった。

そして、試合終了のホイッスルを聞いた。

「やったぁ、岬くん。優勝だよ。金メダルだよ」

翼くんの喜んでいる声を聞きながら、
僕はその場にへたりこんでしまった。

気が抜けてしまったのと、脚の痛みがひどかったせいもあるのかも。

でもそれだけではない。
終わった途端、引退の2文字が浮かび、その事実を突き付けられた気がした。

そしたら、力が抜けてしまった。

「岬くん、大丈夫?」

屈み込み、僕の肩に手を置き顔を覗き込んできた。



「ねぇ、翼くん・・・。 もし、もしもだよ・・・」
一拍置いて続ける。
「もし、僕がこのままサッカーできなくなっちゃったらどうする?」

「なに言ってんだよ。岬くん・・・」

「だから、もしもだってば・・・、W杯一緒にいけなかったら・・・」

「そんなに怪我が酷いのかい?
 脚が痛くて弱気になっちゃってるのかな?」


どうやら、決勝が終わってほっとしたのと、脚の怪我で弱気になっていると判断してくれたらしい。
僕もそのつもりで、それを狙って言ったんだけど・・・。

「そうなっても、魂は一緒だよ。側に居なくても、気持ちは一緒。
 岬くんと一緒に出場したって思えるんだよ」

「・・・」

「アジア予選の時、岬くんは『俺の声が聞こえた』って言ってくれた。それと同じだと思う」

「翼くん・・・」


「でも、俺は岬くんと一緒に行けると信じてるから」

そう言って、あの、いつもの無邪気な笑顔で微笑んだ。





首に金メダルが掛けられる感触。
表彰台の真ん中で君が代を聞いた。

それから、インタビューなどもあり、その後は病院へ・・・。

脚の怪我がある為、帰国が一人遅れるかと思っていたけど、みんなと一緒帰国できた。

日本へ戻ったら記者会見だったり、取材だったり、スポーツ番組に出演したり色々と忙しく過ごした。







そして、僕はまた、富士スポーツ医学研究所にいる。

「先生、やっぱり、僕はもう・・・」

病室で柴崎先生との話し合い。

「以前言ったこと覚えてるよね?」

「はい」

左脚を三度傷つけてしまった時は、引退。
リハビリをしても、草サッカーくらいはできても、
世界を相手にするサッカーは、トップレベルのプレーはもう出来ない。

引退の覚悟を決めたはずなのに・・・。
でも、覚悟なんてできていなかったんだなぁ。



「岬くん、リハビリすれば、今まで通りのプレーができるようになるよ」

「ほんとですか?」

その時の僕の顔は、相当切羽詰まったものだった。

「ただし、可能性は数パーセント。確証もない」

「でも、可能性が数パーセントでもあれば・・・」

「それだけじゃない。草サッカーすらできなくなるかもしれない。
 むしろ、その可能性の方が高い。それでもやるかね?」

「それでも、僕は・・・」

「しばらく考えてから結論を出して欲しい」

それだけいうと先生は部屋を出て行った。




これ以上考えなくても、もう決まっている。

『岬くんと一緒に行けると信じてるから』
そう言ってくれた、翼くんの言葉が甦る。

僕の夢は叶ったよ。
次は翼くんの番。

だから僕は・・・。







次の日の朝、芝崎先生が僕の部屋にやってきた。


「先生、僕、再起不能でも、引退でも、
 それでもほんの僅かな可能性があるならかまわない。
 このリハビリで2度とサッカーが出来なくなっても、
 ううん、ボールを蹴ることすらできなくなってもいい。
 ただ少しでも可能性があるなら、その可能性に向かってがんばりたいんです」


「まあ、それだけの覚悟があるなら大丈夫だろう。
 今回の怪我は、それほど深刻なものではないし・・・」

深刻なものではない?
あれ?

「えっ、だって再起不能だって・・・」

「いやあ、すまない。キミの覚悟を見たかったもんだからね」

「なんですか、それ?」

「キミはリハビリの辛さを知っている。
 生半可な覚悟じゃダメだということも。だからこそ、キミの気持ちを確認したかったんだ」

柴崎先生は、時々、意地悪だ。


「それに、始めてここにきた時と同じ目をしていたからね。
 強い意思と・・・。その反面壊そうな・・・。だから、一旦冷静になって考えて欲しかった」

「だからって・・・」

あんまりだぁ・・・。

「で、岬くんのそこまでの思いは、なんなのかな?
 オリンピックで金メダルがキミの夢ならそれは叶ったはずだ。キミはもう少し自分のために・・・」

「先生、W杯優勝は僕の夢です」

柴崎先生がなにを言いたいのかはわかってる。
だからこそ、先生の言葉を遮り続けた。

「だって、翼くんの夢は僕の夢だから。 
 約束したんです。オリンピックの金メダルも、W杯優勝も一緒にって・・・。
 だから、僕の夢。僕は自分の夢を叶えるためにリハビリをするんです」

先生も頷いてくれた。







今、僕はまた、富士スポーツ医学研究所でリハビリをしている。
誰のためではない。自分のために・・・。






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Secret

こんにちは。

しゅんな様
急に寒くなってきましたが、風邪などひいていませんか?

「夢みていよう」拝読です♪
WY編~2002の岬くんの復活って、自分のためよりも、翼くんのため、仲間のため、山岡家のため、の方が強かったと思うんです。
なので、最後に今度は「自分のために」という岬くんに、すごく安心しました。

また、試合の中に見えるGCや3Mの関係性。
ケガをしても、岬くんのプレーを求める翼くんと「弱い部分を狙うのは当然」という三杉くん。それに応える岬くん。試合中の厳しさを感じました。

岬くんが無事に再度復活して、まだまだ仲間を同じ夢をみていられるといいな~と思います。

Re: こんにちは。

なおさま、いらっしゃいませです。

翼くんが「オリンピックの金メダルと両方叶えよう」と言ってくれた時から、
岬くんは「翼くんの夢は僕の夢」と考えるようになった気がしちゃうんです。


なおさまのおっしゃるとおり、岬くんの復活は、みんなの為って気が私もします。
でもね、岬くんだったら、
「自分がしたかったことだから」とかさらりと言って退けそうなのです。

翼くんのために一緒にW杯。
そう考えてはいますが、それは自分がそうしたいから。
まわりに「翼のために帰ってきた」と思われても、それが自分のしたかったこと。
だから、「自分のために」になるのです。
そう思いたい。

試合は・・・、やっぱり世界は厳しいのです。
でもね、それは、岬くんがそれなりの選手だから、だからみんなに狙われる。
いつも、翼、翼って・・・。
そうじゃないって思いが有るのですよね。

岬くんは、がんばって復帰します。だって岬くんだもの。

なおさまのところのレス読みました。
G23 わーい。同じ思いです。
ほんと、全巻持参で語り合いたいですね^^

めっきり寒くなってきたこの頃、なおさまも、ご自愛くださいませ。
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