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おさななじみ  

「啓介のばかぁ。大っ嫌い」

彼女はそう叫ぶなり、走り去って行った。

瞳からは涙が零れ落ちていた。

「あづみ・・・。ごめん」

俺の謝罪の声は届いたか分からない。




俺とあづみは、フランスの日本人学校の中学生で、幼馴染み。

学校の中で一番昔からいるのがあづみで、次が俺で・・・。

だから彼女には色々と世話になった。


そして、それ以外のメンバーは、帰国してみんな入れ変わってしまった。


あづみはしっかりしているから、大概クラス委員長で、俺が福委員長で・・・。


お互い、からかい合い、ふざけて物を隠すなんてこともしたっけ・・・。

男勝りなところのあるあづみは、それでも泣くことなんてなく、
小さい頃は逆に泣かされたこともあったけ。



それでも、困ってることがあると、あづみが一番に気付いてくれた。


あづみと一番仲のいい異性は自分だと思っていた。
いや、自分だった。

そう、日本から新しい友達がくるまでは・・・。

最近、そいつとばかり仲良くしていて、
だからまた、昔のようにからかいたくなってしまった。

ちょっと意地悪したくなってしまった。


あづみは鞄にキーホルダーを付けている。
とても大事にしてるキーホルダー。


放課後、あづみが教室にいなくなったのを見計らって、
そのキーホルダーを鞄から外して、俺のポケットに隠した。


あづみの慌てふためく様子をちょっと見て、謝るつもりだった。


用事を済ませたあづみは、帰ろうと鞄を手に取った。

そして、キーホルダーがないことに気が付いた。

「あれ・・・? うそ・・・?
 ない。どこで落としたんだろう?」
 
そう、独り言を呟いた。
そして、テラスに走っていった。

後を追いかけた。

「あづみ、どうした?」

キーホルダーを探してる彼女に声を掛ける。

「キーホルダーがないの」

その様子は、思ったよりもはるかに慌てていてた。

「ここでランチした時にはあったの。
 だから落としたのは、ここかなって思って・・・」

探しながら呟く。

「2年も使ってるから、チェーンが馬鹿になっちゃったのかな?」

とても悲しそうな顔をして、こっちを見る。


さすがにいたたまれなくなって、ポケットから差し出す。


「啓介が取ったの?」

こっちが何か言う前に、あづみの方からつっ掛かってきた。

「取ったというか・・・」

「ひどい。大事にしてるの知ってるよね?」

素直に返すつもりが、何故か腹が立った。

差し出したのが岬なら、
『見つけてくれてありがとう』

とか言うんだろうな。
日頃の行いの差だろうけど・・・。

「返して」

と、俺の手の中から取り返そうとしてきた。

ほんの些細な意地悪な気持ち。
あづみに取られるまいと、キーホルダーを持ってる腕を高々とあげた。
身長差であづみは届かない。
ほんとにすぐ返すつもりだった。

でも、ビーズで作ってある犬の形のキーホルダーの、ワイヤーが木の枝に引っ掛かったらしい。
気付かず勢いよく引っ張ってしまった。

ビーズが弾け飛ぶ。

そして、冒頭のセリフ、
「啓介のばかぁ。大っ嫌い」

と言われた訳で・・・。
正直いってこんなことで、あのあづみが泣くなんて思っていなかった。

そしてこのシーンを、たまたま通りかかった岬が見ていた。

泣きながらの去っていくあづみと、岬がすれ違う。
「ごめんね。岬くん」

あづみは岬にあやまっていた。



「あづみちゃん、泣いてたね」

そう言いながら、飛び散ったビーズを拾い集める岬。
慌てて俺も拾う。

「このキーホルダー、小鉄に似てるって大事にしていたもんね」

小鉄というのは、あづみが可愛がってる愛犬。

真っ黒い、ラブラドールレトリバー。


あらかた拾い集めた。

テラスのベンチに岬と並んで腰をおろす。

「なあ、あづみの奴、なんでお前にあやまっていたんた?」

「う~ん・・・、僕が買ってあげた物だからかな・・・?」

「そっか、お前があげた物だったんだ」


そうか。そうだったんだ。
大事にしてるのは、小鉄に似てるからというより、岬に貰った物だからなんだ。


「ねぇ、啓介くんは、あづみちゃんのことが、好きなの?」

「えっ、好きというか、幼馴染みだし。なんていうか・・・」

しどろもどろな俺。


岬は、そんな俺をじっと見つめている。

何故、こんな時だけ鋭い?

「以前、本で読んだんだ。男の子は、好きな女の子のこと、いじめたくなるものなんだってね?」

顔が真っ赤になっていくのが、自分でも分かる。

「これ、直して、あづみちゃんに返して、ちゃんと謝ろう。ねっ」


何故、俺の気持ちは分かるのに、あづみの気持ちには気付かない?


「俺、こんなの直せないぜ。岬は器用だから、直せるのか?」

「僕だって無理だよ。買ったお店で直して貰おうよ」


それともほんとは気付いていて・・・?




そんな訳で、岬に連れられて雑貨屋へ。


岬は、常連らしく、店の女性オーナーとは、なじみの関係みたいだ。



「いつもの女の子は一緒じゃないの?」

そう、声を掛けられている。

「ちょっとね」

いつもの女の子とはあづみのことらしい。

「あの、これ直せますか?」

岬が聞いてくれた。

俺は、壊れたビーズのキーホルダーと、ちり紙に包んだビーズを差し出した。


「もちろんよ。わたしが作ったんだもの」

「あの、いくらですか?」

俺が聞くと、

「いいわよ。お金なんて。岬くんの友達なら特別サービス」

そう言って岬の方を見て、微笑んだ。



直して貰った帰り道、

「岬、どうもな」

そう言う俺を見て、にっこり微笑んだ。

「直ったキーホルダー、喜んでくれるといいね」

俺の為というよりはあづみのためなのかな?

ほんとはあづみの気持ちに気付いて・・・。


「でも、僕ができるのは、ここまでだよ。あづみちゃんと仲直りしてね」

いや、岬に限って、それはないか。


「なんでここまで付き合ってくれたんだ?」

雑貨屋なんて付き合わなくても、場所教えてくれれば済むことだし・・・。
でも、こんなところが彼の優しさなんだな。
こいつが好かれているのがよくわかる。


「だって、クラスメート同士の喧嘩ってよくないよ。
 特に、啓介くんとあづみちゃんって、普段とても仲いいでしょ。
 それに、あづみちゃんが元気ないと、学校自体盛り上がらないし・・・ね」


岬はあづみが好きなのだろうか?

いや、好きなら俺に、ここまで付き合わないか・・・?

「うん?なあに?」


まじまじと見つめてしまった、俺の視線に気付いた岬が問う。


「いや、なんでもない。俺、今からあづみのとこ行ってくるわ」

「うん。がんばってね」

そんな岬の声を背中で聞いた。




あづみに、キーホルダー渡して謝ると、また泣かれてしまった。
でも、さっきの涙とは理由が違う。

「ありがとう。啓介。
ほんとにありがと。さっきは嫌いって言ってごめんね」

そう言ってくれた。

簡単に仲直りできた。

「岬のおかげだよ。彼が雑貨屋で直すこと提案してくれたから。彼にも礼いったほうがいいよ」

それを聞いたあづみは、キーホルダー受け取った時よりも、嬉しそうだった。

言わなきゃよかったかも?
なんて思いが頭に浮かんだ。

「そうなんだ。岬くんが・・・」

あづみは幸せそうな顔してた。

俺に勝ち目ないかも。そう思うと溜め息が零れた。








~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ここにでてくるキーホルダーは、『麗らか』で岬くんが、あづみちゃんに買ってあげたものです。
あづみちゃんのこと好きな男の子がいてもおかしくないかな。って思った話です。
一応、岬×あづみでいいのかなぁ?

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