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泣きたい気持ち  

「岬くん、日本に行っても元気でね」

僕は日本へ帰国することになった。

フランス、パリ、 シャルル・ドゴール空港での別れ。
いままで何度も別れを経験してきた。でも今回はいつもとなにか違う。何故だろう?

ふらのでの松山達みんなとの別れも、もちろん辛かった。明和での別れも・・・。
そして南葛のみんなとの別れ、特に翼くんとの別れが今までで一番辛かった。
でも、でも・・・。
それとは違う別れの辛さ、悲しさがあるのは何故だろう?
今までに経験したことのない淋しさが込み上げて来る。
3年間もフランス、ここパリに居たからだろうか?
僕達親子にとって数年間同じ土地で過ごすのは今回が初めてで・・・。
別れが日常になっていたことを忘れていたのかもしれない。

だからなのだろうか?


フランスで過ごした3年間の思い出が走馬灯のように甦る。
涙が浮かんでくる。

「いくら転校がなれっこになったとは言っても、やっぱり別れは辛いな」
父さんが言った。

「うん」

そう返事するのが精一杯だった。
だって涙が零れそうだったから。

なにかしゃべると、そのまま泣き出しそうだったから。
僕は窓の外を見てるふりをした。

飛行機が離陸した。

外に流れるフランスの風景を見ながら、浮かぶのは日本人学校のみんなのこと。




まだフランス語の通じない僕。

その日は、課題に出された本を買いに行ったんだけど、言葉が通じず目当ての物が買えない。
その時、あづみちゃんが助けてくれた。

でも、あづみちゃんはあづみちゃんだったなぁ。
心配して『一緒に買いに行こう』と声を掛けようと付いてきたらしい。
でも、声を掛けるタイミング失っていたようだ。なのに、
『たまたま、偶然通り掛かっただけなんだから。心配なんてしてないんだから』
なんて言っちゃって・・・。
そして、
『岬くん、みんな助けてくれるから、
 自分で頼めばみんな助けてくれるよ。そういう人達だから』と言ってくれた。

ほら、こうやって心配してくれているくせに、素直じゃないんだから・・・。
「あづみちゃんありがと。うん、みんないい人達だね。でもね、まず自分でやってみたいんだ」

なんて答えたけど、心配してくれてることとてもうれしかったな。


助っ人で入ったサッカーチームが負けた時も、
普通にしてたのに、あづみちゃんにはヘコんでること見抜かれた。

「いつまでも、なに落ち込んでるのよ」
相変わらず言い方はきつかったけど、心配して励ましてくれてるのが分かった。


そんなこと思い出していたら、ますます泣きたい気持ちになる。



機体が水平飛行に入る。
シートベルト着用のサインが消える。

僕はトイレに駆け込んだ。
涙が止まらなかった。
後から後から溢れてきた。

まいったなぁ。


ひとしきり泣いた。

顔を洗っても、なんか目が赤くて、腫れている感じがする。

このまま、トイレにいる訳にも行かないし・・・。

席に戻る。
こんな顔を見られたくなくって、父さんから視線を逸す。


父さんは、僕がトイレになにをしに行ったか気付いてるみたいだ。そして、僕の気持ちにも。

でも、なにも言ってこなかった。
なにも、聞いてこなかった。



日本人学校の友達というよりは、あづみちゃんの事ばかり思い出したことに気付くのも、
涙の理由に気付くのも・・・。

そう、この時の自分の気持ちに気付くのはもっと先のことになる。

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